オフィスVGMの仕事

はとりべ半蔵門@hatoribehanzomonです。ライターの仕事をしています。VGMというテーマから、世の中で起きたことで感じたこと、学んだこと、旅したことなど、発信していきます。

◉ VGMの由来

VGMとは、ドイツ福音派教会のいくつかの賛美歌集にも収録されている賛美歌のタイトル”Von Guten Mächten”「善き力にわれ囲まれ」の頭文字を引用しました。この詩を書いた牧師であり神学者のディートリッヒ・ボンヘッファー Dietlich Bonhoeffer(1906年生まれ)は、ナチス統治下でヒトラー暗殺計画に加わり投獄されました。そして1944年のクリスマス、「新しい年に希望を持とう!」と、ベルリンにあったゲシュタポの獄中から婚約者Mariaに宛てこの詩を送りました。しかし、望みは叶うことなく戦争の終結前の翌1945年4月9日、強制収容所でナチスによって処刑されました。39歳でした。その歴史的事実の意味を、今も考えています。

世の中には、厳しく苦しいこと、悲しいことが起こってします。ただ、理不尽なことばかりではなく、良いこともあります。そんな時、私たちの周りには多くの「善意=Goodwill」があることに気づきます。良い人たちに囲まれ、その力によって生かされ、今に至っていると実感します。そんな人の心根がどこから来るのか、想像しながら言葉にしていきたいのです。

◉ VGMへの思い

2019年9月3日、くしくも私の57歳の誕生日でした。自動車修理に関わる様々な製品を輸入販売していた勤務先の倒産が発表され、即時解雇となりました。しばらく時間も心もスッポリと空いてしまい、不安を抱きつつ、あれこれと次のステップとなる道を探しました。

そのようななかで11月、私の人生観に大きな影響を与えたベルリンの壁崩壊、チェコのビロード革命から30年後の現場を見ようと旅に出ました。ベルリンではD. ボンヘッファーに由来のある教会やナチに関連する記念館などを訪ねました。また2週間の滞在中、各地で友人に再会し、音楽を聴く機会にも恵まれました。

同じ街に何度か訪問していても、そこにはまだまだ知らない歴史や文化があり、世界の深さや広さを知らされました。旅から帰った後、所属する教会聖歌隊でクリスマスに「善き力に(VGM)」を指揮しました。旅の思いを受けて音楽とその背景に向き合い、改めてその意味を噛みしめていました。そして、自分に何ができるだろうと思い、Vehicle乗り物も、Goodwill善意も、Music音楽も、より豊かな暮らしや人生につながることを願いっています。

◉ 2020年はさまざまな節目の年

今年2020年は、第二次世界大戦の終結から75年。東西冷戦の象徴だったドイツ統一からも30年目です。その1990年、私は統一直前の東西ドイツを初めて訪れました。2週間余りの滞在で、欧州の音楽の根底に流れている歴史や文化を体験し、見聞を広めるに十分な感動的な旅でした。

今回、オフィスVGMとしてのスタートを、ボンヘッファーの命日である4月9日に予定していました。しかし、コロナ禍の影響で活動できない状況であったため、延期を決めました。新たに設定したのは7月20 日。この日は1944年にヒトラー暗殺計画が実行された日で、私たちも記憶すべき日だと考えています。

最近になって日常生活でも、感動を受けた意味や、その背景となる歴史や社会などに目を向けつつ、新たに調べたものと合わせて記録に残す作業が大切だと思うようになりました。一つひとつの体験などへの理解を深めていくことが、平和な世界を築くための礎になると信じています。そのようなわけで、 VGMを基本テーマに据えて歩むつもりです。