アレクセイ、マキシム。そしてドーラさん。
30年前の1990年5月8日、ドイツ各地を10日ほど巡って歌ってきた合唱団のメンバーたちと別れ、前年に壁が崩壊した後、10月に東西が統一するベルリンの様子を見たいと向かった。大学時代の恩師がベルリンに居たことも、行き先を決めたもう一つの理由だ。
6人がけのコンパートメントで5時間近くの間、同席することになった。一緒に写真を撮ったアレクセイとマキシムの少年2人は、少年少女合唱団の演奏旅行を終えてレニングラード(現在のサンクトペテルブルク)に帰る途中。気品のあるおば様、ドーラさんは、息子さんが住むデュッセルドルフ郊外からベルリンの家に戻るところ。ひとり旅になったが、英語とドイツ語でいろんな話をした。音楽の話題が多かった。そしていずれも住所も聞いたので、その後もしばらく手紙のやり取りを続けた。
その後2人の少年は、1991年夏、演奏旅行で日本を訪ねてきた。彼らも日本全国を旅したが、荒川の日暮里と池袋の東京芸術劇場で再会することができた。ロシアの作品を中心にしたレパートリーで、素晴らしい演奏を聴かせてくれた。ドーラさんはその後、デュッセルドルフ近くの老人ホームに移り住んだので、1994年に再びケルンを訪れたときに足を伸ばして再会することができたのだった。
旅で人に出会うこと。人生の楽しみの始まりであると思ったのは、この時が初めてだった。旅に出たらいつも、つたなくても、なるべく現地の人と話をしてみることを心がけている。



